萬屋本店随一の人気花嫁和装「藤娘きぬたや」さんの勉強会

萬屋本店随一の人気花嫁和装「藤娘きぬたや」さんの勉強会

皆様、こんにちは。
萬屋本店の石井でございます。
先日、萬屋本店の花嫁和装の中でも随一の人気を誇る絞り染めの名家「藤娘きぬたや」さんの勉強会を開催いたしました。
萬屋本店のブランディング撮影でも着用させていただき、この写真を見た日本全国の花嫁様からも「この着物を着たい!」と熱烈なお問合せをいただいている総絞りのお着物。
この着物を制作されているのが「藤娘きぬたや」さんです。

1947年に名古屋で創業し「誰も創ることが出来ない絞り・誰も創ろうとしない絞り」をテーマに美の極限に挑戦し、究極の総絞りを追及している「藤娘きぬたや」さん。
実は、昨年2022年の紅白歌合戦で審査員の芦田愛菜さんが着用されていた振袖も藤娘きぬたやの作品。
唯一無二の絞りの技術や、従来の概念を覆す鮮やかな色彩とグラデーションで表現したきぬたやカラーは国内外から注目され、高く評価をされています。
今回の勉強会は、「藤娘きぬたや」の職人さんがわざわざ鎌倉にお越しいただき実現した貴重な機会となりました。
その時の様子とともに、「藤娘きぬたや」の着物の成り立ちや、職人の想い、お着物の魅力をご紹介していきます。

今回貴重なお話を聞かせていただいたのは、18歳から47年もの間、「ただただお客様に喜んでもらいたい、いいものをつくって驚かせたい」という想いで絞り染め一筋の同社三代目作家・安藤嘉陽さん。
初代伊藤嘉敏氏、二代目伊藤嘉秋氏に師事し、長年きぬたやの染色の現場で学んで積み重ねてきた知識と技術を土台に、独創的な感覚で新しい作品を生み出していらっしゃる職人さんです。

安藤さんからお伺いした、きぬたや独自の絞りの技法や秘話、萬屋本店の花嫁様のために仕立てたお衣装への想い。
そんな勉強会の内容をレポートいたします!


藤娘きぬたやさんとの出会い

実は、元々婚礼衣装のお取り扱いはなく、訪問着や振袖を専門としていたきぬたやさん。
なんと、萬屋本店との出会いをきっかけに、婚礼衣装を特別に手掛けてくださったという背景があります

新郎新婦様の一生にとって、ずっと記憶に残り続ける大切な1日が結婚式。
そんな日には妥協なく本物の衣装を身に纏っていただきたいという想いで宮腰が探していたのは、今の流行りやトレンドに左右される衣装ではなく、日本人がずっと大切に受け継いできたものや時代が変わっても色褪せない価値のあるもの
そんな思いで5年ほど全国のお着物を探していたなか、知人のご紹介で出会ったのがきぬたやさんでした。
出会った瞬間から最高峰の技術や鮮やかな色彩の素晴らしいお着物に魅了され、
婚礼衣装のプロジェクトがスタートしました。

実際に名古屋にあるきぬたやさんの工房に足を運び作業工程を見学やお打ち合わせをさせていただいた様子

一反を絞り上げるのに2年以上もの時間をかけてつくっていただいた萬屋本店オリジナルのお着物。絞りの粒の数はなんと20万粒以上に及びます。

 


世界中から注目を集める
「藤娘きぬたや」の最高峰の技術

昭和22年の創業当初から、日本一の京絞りの技術をルーツにオリジナルの「きぬたや絞り」を生み出し、親から子、子から孫へと受け継がれていくクオリティー・カラー・デザインを追求し続けているきぬたやさん。常識に囚われないものづくりの精神は今もなお受け継がれており、伝統技術を守りながらも新たな可能性を追い求め、常に挑戦を続けられています。

その魅力は今や国内外に認められ、ニューヨークのメトロポリタン美術館には館長からの「ぜひうちに永久保存してほしい!」という熱烈な依頼を受けるほどに。今も、常設展には日本の着物の代表としてきぬたやさんのお着物が展示されています。

そんな藤娘きぬたやのお着物は、図案を描き、絞りの工程を経て、染色するという三つの技術が重なって初めて、一反の生地が出来上がります。

頭の中のイメージを形
きぬたやの着物は職人の図案からはじまる

大胆で伸びやかなデザインが特徴的なきぬたやさんのお着物のすべては図案を書くところから始まります。思い浮かんだイメージをもとにまずは下絵を起こし、図案を作ります。
この図案に、どこにどんな技法を使って生地を絞るかという指示も書いていきます。
きぬたやの「絞り」は一人の職人が一種類の技法を絞るため、漠然としたイメージから図案を起こし型紙へと落とし込むためには、職人の技量や工程を知り尽くしていることが不可欠だそう。

下絵に従って絞る部分を実寸の方眼紙に落とし込み、
その後、和紙を柿渋に何度も浸した型紙に写して彫刻刀のような道具で彫っていきます。

誰もつくることができない絞り、
誰もつくろうとしない絞り

図案に従って、熟練した職人さんが一粒一粒を丁寧に絞っていきます。
藤娘きぬたやの絞りは一人一工程でひとりの職人さんは1種類の絞りのみを担当し、次の職人さんへとバトンを渡します。
「絞り」は、職人が生地を小さくつまんでは括り、つまんでは括りを繰り返し、丹念に一粒一粒を絞っていくことでつくられる、まさに人の手仕事の結晶です。

特に藤娘きぬたやが得意とする「疋田絞り」は、生地を4つに折って先端を45度にひねって絹糸で巻いて作る、気の遠くなるような作業の連続。
勉強会では、実際に安藤常務に疋田絞りの技術を見せていただきました。一見するだけでは何が起こっているか理解できないほどの繊細で細かい作業に、会場からは驚きの声があがりました!

生地の全てが絞られた「総絞り」のお着物は一つの振袖で約20万粒以上。
職人さんの技術と魂が込められているお着物は圧巻の迫力があります。
この絞りの繊細な手仕事は、手先が器用な人を100人集めてもその中で1,2人しかできないとも言われています。

多くのメーカーは“綿”の糸で絞りをつくるなか、藤娘きぬたやの「疋田絞り」は細い絹糸を使って12回も巻いて作ります。
こうして細い絹糸を使うことで根元から先まで絞ることができ、絞りと絞りの境界線が狭くなるため、一粒一粒が細かくよく揃った絞りは生地に美しい陰影を生み出します。

その他にも、線を表現する「一目絞り」や、帽子をかぶっているように見える「帽子絞り」など、それぞれの絞りの技法に熟練した習熟した職人たちの技法を使い分けることで、唯一無二の「きぬたや絞り」の世界をつくり出しているのです。

 

試行錯誤の末に生み出された、
きぬたやにしかない美しい色

絞りが施された生地を、一色ずつ丹念に染めていきます。
絞りの工程で括った部分は、染色のときに色が染まらず白く残るため、それが絞りの模様となり、独特の風合いを作ります。
きぬたやさんのお着物は、絞った状態で染色を行いますが、これには絞りを解いた時を想像しながら染めるという高い技術が必要となるのだそうです。   

染色に使われている色はなんとたったの「5色」
色々な染料を試し配合しながら独自に追求を重ねて30年、行き着いた先がこの「きぬたやカラー」とも呼ばれる5色なのだそうです。 着物
の世界では渋い地味目の色が流行っていたなか、「洋風の発色のいい、クリアな色を作りたい」と、安藤さんは強く思ったそう。
鮮やかな色彩とグラデーションで表現されたきぬたやカラーは「絞りは単色」という一般的な概念を覆し、世界中から注目を集めています。

 


唯一無二の絞り染めを 一人でも多くの花嫁様に

勉強会の結びには、私たちからの質問にも答えていただき、安藤さんの想いの部分もたくさん聞かせていただきました。
ぜひ動画でも、ご覧ください。

◾️安藤さんは「着物」にはどんな魅力があると思われますか?
”「着る」ということは「魅せる」こと”
「街を歩いていて洋服なら振り向かれないかもしれないけれど、お着物を着ていたら必ず振り向いてもらえる。」とお着物の魅力を語ってくださった安藤さん。
お着物で撮った写真や思い出が歴史となり、それが代々受け継がれていく。
そんな強さが着物にはあるんだと力強くお答えいただきました。

 

◾️きぬたやさんのお着物をお召しになる花嫁様にメッセージをお願いします!
まずは「選んでくれてありがとう」と言いたい。そして、素敵な写真を残して欲しい。
それから、お客様の幸せな写真を見て、社員と一緒に喜びたいんだと、笑顔でお伝えくださいました。

 

絞り染めができる職人さんが貴重で、高度な技術を残していくことが難しいのが現状の中、魅力的なお着物を世の中に生み出し続けるきぬたやさん。
この勉強会を通して職人さんたちの想い、そして高い技術に裏付けされた美しいお着物のことを知り、お客様にもっともっときぬたやさんのお着物を知っていただきたい!と強く思いました。

改めて、伝統や受け継がれてきたものを大切に重んじながら、常に新しいことや他にない技術を取り入れていかれるきぬたやさんと共にこれからも婚礼衣装の挑戦をさせていただけることをとても光栄に思います。

手仕事の最高峰と呼ばれる日本人の美意識と職人さんの魂のこもったお着物をぜひ、萬屋本店で結婚式を挙げられる一人でも多くの花嫁様にお召しいただきたいと思っております。
今までお取り扱いしていた白絞り、黄色絞りに加え、この1月2月で新たに濃紺、深緑、黒の3着の総絞りと、3種類の絞り帯も入荷いたしました。
こちらはまたの機会にブログでご紹介させていただきます。
ご試着は全て萬屋本店専属衣裳店のオーセンティック鎌倉にてご試着いただけます。
まずはお衣装合わせのご試着から、お気軽にご相談くださいませ。

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