【萬屋本店の料理を進化させた立役者】キッチンマネージャー藤本の想いに迫る

【萬屋本店の料理を進化させた立役者】キッチンマネージャー藤本の想いに迫る

こんにちは。
萬屋本店の長谷川です。
今回は萬屋本店のおもてなしに欠かせない「お料理」を担う、キッチンマネージャーの藤本亮のインタビューを綴らせていただきます。
 
4年前に藤本がDaiyuに入社してから、萬屋本店の婚礼メニューは全ての内容が見直され、大切にしたいコンセプトはそのままに、ゲストの方に更に喜んでいただける料理へと進化を遂げました。
また、レストランメニューも、季節の移り変わりと共に新たなメニューをお届けできるようになり、リピーターの方からの予約で満席が続いています。
 

《萬屋本店 キッチンマネージャー 藤本亮》
 
本場フランスへの料理修行、名のある有名店での修行、都内のレストランを任されてきた経験などを積んだ後、なぜ藤本が萬屋本店で働こうと思ったのか?
日々、どんな工夫をして料理を進化させたのか?
普段は語られることのない、キッチンの裏側に迫ります。
 


 

萬屋本店に出会って変化した「結婚式」への想い

 
—「萬屋本店」のどんなところに惹かれて転職したんですか?
Daiyuへ入社する前は、自分自身の結婚、子供が生まれたこともあり「家族との時間も大切にしたい」と自宅から近いエリアでの転職活動をしていました。
萬屋本店が結婚式を行うレストランであることは、応募の時から知っていました。
自分が結婚式をしていないからというのもありますが、家族を持った身として「結婚式」というものや、そのフィールドで料理でどこまでお客様に寄り添えるだろうかと密かに興味がわきました。
 
実はもともと婚礼料理に対して印象が良くなかったんです。
ホテルウェディングで働いている諸先輩方の話を聞いても、婚礼に対して熱意が感じられず、メニューの変わらない料理の仕込みをするというのが毎週のようにルーティンになっていて、正直、料理人としては面白くないという印象を受けていました。
 
萬屋本店も結婚式がメインだからこそ、以前感じた印象からの懸念が無かったとはいえませんが、平日レストランをやっているというのが自分の中では大きな後押しになり、応募したいと思いました。
また、料理人としての経験も深めてきていたので、今までの経験を、萬屋本店のレストラン営業と婚礼のどちらにおいても活かせるのではないか?と思ったことも大きな理由です。
 
 
―実際の「萬屋本店」の第一印象について聞かせてください
入社の前に、最初は現場体験の機会をいただきました。
レストラン営業の日、一日萬屋本店の厨房に入らせていただいた時、スタッフみんなの熱量の高さがすごく印象的で、初対面なのに自分に対するスタッフのあたたかさと距離感の近さを感じられたことが、とても印象的でした。
 
 
—これまで婚礼に関しては良い印象がなかったとのことですが、萬屋本店の結婚式に携わったことで気持ちの変化はありましたか?
萬屋本店では結婚式が結んでから新郎様新婦様が退場後、スタッフ全員でお二人をお迎えする「スタッフ集合」があります。
ホテルウェディングの場合は新郎新婦様のお顔を拝見することはほとんどないと聞いていたので、最初はびっくりしました。
しかし、この体験を通して、自分たちがどんなお二人のために料理を作っているのか、この一日を通して、お二人がどれだけ幸せになれたのか、改めて感じることができたんです。
その日の感想をお二人から直接聞くことができたことで結婚式ってこんなにも人の感情を動かされるものなんだと、感銘を受けました。
日頃、厨房でお料理をつくっている僕たちは、お客様と携わる時間が少ないからこそ、その時間がすごく励みになりました。
 


 

料理クオリティを進化させるための工夫

 
—フランスへの料理修行、オテル・ドゥ・ミクニでの経験、お店を任されていた経歴をもつ亮さんだからこそ、この萬屋本店の料理をもっとこうしたい、変えてみたいなど、新たなイメージがふくらんでいたのではないですか?
自分が入社する前に、萬屋本店での歴史やスタイルは生まれ築き上げられていると思います。
だからこそ、新たに加わった自分が、自分のつくりたいものをつくるというのは違うと感じ、まずは、周りに認めてもらうことの意識が強くありました。
和出汁を使ってフランス料理の技法を用いた料理をはじめとして、萬屋本店がどんな料理をつくっているのか、お店として何を大事にしているかを理解し、それらを自分に落とし込むことに取り組みました。
 
また、レストランと婚礼の二軸で働くことが今までは無かったので、それに慣れること、この新たな経験を吸収することを大事にしたかったというのが本音です。
 

《萬屋本店の料理は和出汁を起点としたフレンチ》
 
—そこから進化させるために工夫したことはどんなことですか?
まずは、お客様に喜んでもらうことを自分なりに考え抜きました。
婚礼料理は細かな時間配分があって、その厨房の限られたスペースの中で安心安全にお料理が提供できることが第一です。
開発や試作の時点で創れた料理でも、それがどんな環境でも確実に出せるものでなければ意味がなく、お客様が10名様であっても80名様であっても、同じパフォーマンスでお料理を出すことが求められます。
 
また、成長過程のスタッフも含め、共に成長し、クオリティを追求しながら、メンバー全員が、いかにお客様のことを想って創れるかが大切だと考えました。
人が動きまわるのではなく、料理のお皿が回ってリズム良く、同じクオリティで出せるようなオペレーションを構築するのがとても難しい点でした。
 

《スタッフ教育にも力を注ぎ、チーム力を高めていった》
 
—どんな点にやりがいを感じますか?
ご来店される方は、小さなお子様やご年配のお客様もいらっしゃいます。
限られた環境の中で、それぞれのお客様に合わせて喜んでいただくことを考えるのは難しいですが、お客様のことを想像して料理をつくることは何よりの楽しさです。
 
また、今までフランス料理一筋でやってきて、鶏や仔牛の出汁をつかった料理は経験してきましたが、萬屋本店の日本人に合わせたフランス料理というスタイルは面白いと思いました。
フランス修行中は、本場フランスの食材の美味しさに感動したのですが、当然ながら、本場の食材を日本で手に入れるのは全部は難しい。
そこで、日本で本場を真似をするのではなく、日本ならではの食材を活かすことを大事にしたいと思いました。
バターやソースで味が重くならないように和出汁を起点にし、食材の旨味を組み合わせて完成度を高めていく試みをしています。
 
 
—どのような食材を使用しているのですか?
鎌倉には、農家さんから直接野菜を仕入れることができる農協連即売所(レンバイ)があります。
決まった曜日ごとに野菜を販売する農家さんを訪ねて、地元の食材を活かしてレストランのメニューに組み入れています。
日常生活ではあまり見ることの無いお野菜や鎌倉ならではの食材で四季を感じてもらうことを楽しんで欲しい。
そんな想いでメニュー開発を行っています。
 

《珍しいお野菜はサービススタッフが実際にお客様に見せてご紹介もしています》
 
春はホワイトアスパラガスや山菜など、食材をとおして春の訪れを感じられる野菜を楽しんで欲しいですね。
大量生産していない珍しい食材に関しては、量や調理法を工夫してご提供しています。
お客様からは、見たこともない初めて食べる野菜が目新しく、美味しく感動しました!とのお声をいただき、それは私自身の励みになっています。
 
 


 

婚礼メニュー2万円コース
レストランのクリスマスディナーの開発秘話

 
—亮さんが開発した「婚礼2万円コース」の誕生秘話を聞かせてください。
昨年は、コロナ禍で、結婚式ができない、諦めなければいけない、そう悩んでいらっしゃる新郎新婦様からのご相談を多く頂戴いたしました。
悩みに悩み、身近なご家族との結婚式であればと決断された新郎様新婦様が、祝福に集まってくださるゲストの皆様のためにどんなおもてなしができるのか…。
サービスマネージャーの樋口からの声がきっかけとなり、料理を通して心を込めたおもてなしを叶えられないか?と新たなコース開発に踏み切りました。
 

《高級食材、季節の食材をふんだんに使用した婚礼料理2万円コース》
 
2万円コースは、高級食材を使用しているということだけではなく、通常の1万5千円のコースより品数も多く、一品一品に季節の食材を使用しています。
創りたてのお任せ料理を出させていただくカウンター会席のような内容を意図して開発しました。
 

《前菜 鮑と旬野菜の山葵ジュレ カラスミとイクラ添え》
 
コース内容の詳細はこちら▼
「カウンターで割烹料理を召し上がっていただく」をテーマにした婚礼料理コース
 
鎌倉という地ならではの食材、楽しんでいただけるものを用意したいと思い、コースのお凌ぎ料理には三崎の本鮪の赤身と大トロを使用しています。
鮪とお米という日本ではお寿司をイメージする食材ですが、そこにフレンチの要素を取り入れて工夫した一品です。鮪は軽めの漬けにし、大トロは炙ってフレンチの技法でソースを塗ります。お米は京都の飯尾醸造さんの赤酢と米酢を混ぜたものを使ってを焚き上げ、ほんのり色づいたごはんに、すし酢と自家製ドレッシングであえて、サラダ仕立てにしました。
 

《三崎の本鮪とお米のサラダ キャビア添え》
 
鮪はフレンチではなかなか使うことがない食材なので、何度も試作を繰り返しました。
鮪は鉄分が多く酸化しやすい食材なので、ワインとは合いにくいという難しさがあり、これをコースに取り入れるのは大きなチャレンジでしたが、だからこそメニューが完成すればお客様に必ず喜んでいただけるという確信もあり、鮪を綺麗な色のまま、お客様の元に届けられるようにオペレーションにも細心の注意をはらいました。
 
 
—2万円コースの目玉ともいえる、しゃぶしゃぶをお客様に提供することにした背景についても聞かせてください。
しゃぶしゃぶは、つくりたての美味しさを届けることに意味があり、通常の婚礼では提供し辛い料理です。
それを今回は、お客様の目の前で調理してご提供するようにしました。
披露宴会場に丁寧に仕込んだ出汁の香りも広がりますし、お客様同士の会話がはずんでいる様子や、直接嬉しい感想もいただきます。
これは当初より意図していた「カウンター割烹」を体現できたと思います。
婚礼業界の常識である「お料理はある程度火入れをして準備をし、提供する直前に温め直すのが基本」という概念を覆し、より出来立ての状態で提供することにチャレンジしているんです。
 

《お客様の目の前で調理するしゃぶしゃぶ》
 
肉質がきめ細やかで、サシの入りも非常に良い山形牛のロースの部分を鰹と昆布出しに醤油とお塩で味付けした出汁で軽めに火を入れます。
80度前後の温度でお肉にストレスがからないよう優しく火入れすることで山形牛本来の味わいが発揮され口の中でお肉が溶ける食感をお届けすることができます。
そして最後にはその出し汁を濾して、牛しぐれと共に締めのお茶漬けとして召し上がっていただきます。
 

《お肉の旨味を余すところなく堪能できる》
 
—これまでのレストランで培ってきた経験が活きた婚礼メニューなんですね。昨年のレストランで行った、クリスマスメニューについても教えてください。メニュー15品の料理構成の多さにはスタッフも大変驚きましたが、どのように生まれたんですか?
萬屋本店のレストランが、新郎新婦様にとって結婚式後の記念日や、親御様の誕生日、そしてクリスマスに帰って来られる場所になっていることが素晴らしいことだと感じています。
そのため、毎年喜んでいただけるようにテーマを変えて工夫をしています。
 

《2019年のクリスマスのテーマはゴールドクリスマス》
 
婚礼料理を通して萬屋本店の料理を好きになってくれ、また訪れたいと感じていただけたご新郎新婦様に対して、いろんな味わいを楽しんでほしい。
そんな想いで2020年と2021年には少量多品種のメニューにチャレンジすることにしました。
 
限られた時間の中で、15品目をお客様にお届けすることは相当な集中力を要します。
キッチンチーム一人一人が、自分たちが何をしなければならないのか段取りを組んで、入念な準備を重ねることが欠かせません。
15品というメニューの中で、どこか一つでもここが良かった、印象に残ったと言ってもらえることがとても嬉しいですね。
 
 


 

萬屋本店キッチンが大事にしていること
これからについて

 
—萬屋本店のキッチンで大事にしていることは何ですか?
料理を通じて、私たちがどれだけ思いを寄せられることができるか、1組1組様によって料理も変わっていい。
このお客様だからこそ、こんな料理を提供したい。
そんな想いがあるからこそ、これからも特別感のある料理を萬屋本店でつくっていきたいです。
 
また萬屋本店として「家族の団欒」という時間を大切にしていきたいと考えています。
ほっこりとしたあたたかい時間、その一日を大切に過ごせる居心地の良い空間を心掛けていくうえで、サービススタッフからの声や、お客様の情報から多くのことを想像し、お客様に寄り添って料理をすることに重きを置いています。
そして、料理人としてお客様に伝えて欲しいポイントについてもサービススタッフと連携をとることで、お客様とのコミュニケーションの密度を濃くしています。
その結果、お客様の情報も入りやすく、そこで起きる感動や満足度の高さが増していくのをキッチンでも感じることができます。
 
お客様それぞれに直接感想をいただき、結婚式を挙げられた新郎新婦が帰ってきてくださり、笑顔で過ごしていただけていることが何より嬉しい。
これからも料理を通して、結婚式の一日を思い返していただける時間のお手伝いをしていきます。
 
 
—これから手掛けていきたいことを教えてください。
萬屋本店が好きだと仰っていただいている方々に、もっと萬屋本店の料理に興味を持っていただいたり、より好きになっていただけるようなイベントも手掛けていきたいと考えています。
いつか新郎様新婦様限定のお料理教室なんかもやってみたいです。
チャレンジしていきたいことは、たくさんあり、皆様にも楽しみにしていただけたら嬉しいです!
 
 


 

インタビューをしてみて

 
藤本へのインタビューを通し、改めてお客様にとってどうかを共に考えて試行錯誤する姿を知り、同じスタッフとして誇らしく嬉しく感じた時間でした。
また、一児の父でもあるからこそ、藤本自身が家族への感謝や、家族と一緒に過ごす時間の大切さを感じている。そんな気持ちが結婚式の料理やお店づくりにも大きく影響しています。
 
これからも萬屋本店が皆様の大切な人にご紹介したくなるような場所で在り続けられるよう、藤本やキッチンチームを含め、スタッフ一同心を込めてまいります。

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