
「本物」の着物を花嫁様に――名門ブランドとの開発ストーリー
こんにちは。萬屋本店の山本です。
「結婚式では和装を着たい。けれど、どんな着物がいいのか、どう選べばいいのかわからない」。そんなお悩みを持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
萬屋本店でほとんどの花嫁様がお着物をお召しになられます。それらは、選び抜かれた「本物」たち―― 結婚式という一生に一度の節目に相応しい着物をご用意しています。「龍村美術織物」や「藤井染工」といった名門の着物ブランドの一点物や、著名な着物作家と手掛けたオリジナルの着物など、職人たちが日本の伝統技法を用い、気の遠くなるほどの手間をかけてつくられたものです。
そんな貴重な着物とどのように出会い、どんな背景で誕生したのか。ここにしかない特別なストーリーをご紹介します。
よみがえった着物 -龍村美術織物・川島織物との出会い-
まずご紹介するのは、現在ではもう作り手がいない貴重な着物「龍村美術織物」と「川島織物」です。
萬屋本店の衣装を担う「株式会社渕上ファインズ」は1895年創業の呉服店で、長年、日本独自の伝統技術で仕立てられた着物を大切に保有してきました。
その中でもひときわ格式高いのが、「龍村美術織物」と「川島織物」。花嫁に立派な着物を着せてあげたい、と願っていた現社長の祖母が自ら買い付けた打掛です。
あまりに立派で、一度も袖を通されることなく大切に保管されていたそう。そんな貴重なお着物の価値を現代に伝えたい――そこで萬屋本店は、帯や小物、飾り襟などにより遊び心のあるスタイリングをし、『トータルコーディネートで魅せる着物』としてリブランディングをしました。
【川島織物】
日本に伝わる五彩「赤、白、黄、緑、紫」を織り込んだ、まるで絵画のような美しさを持つ織物。川島織物は現在、打掛の製作は行っていないため現存するものはとても貴重な一枚です。
【龍村美術織物】
織物の世界に「美術織物」を確立した初代・龍村平蔵。
立体的でオーロラのように光る色打掛。その美しさは、寸分の狂いもなく織られた匠の技によるものです。
洗練された龍村美術織物の価値を崩さないように、白の掛下を合わせるのが定番ですが、あえて紺色×柄物を組み合わせることにより、洗練されたモダンなスタイルに仕上げました。

約9ヶ月をかけて作られた、富宏染工との色打掛ができるまで
続いてご紹介するのは、京手描友禅着物の萬屋本店オリジナルの色打掛です。
「加賀友禅」「東京友禅」と並び、日本の三大友禅として有名で最も古い歴史を持つ「京友禅」。そんな歴史と価値を伝えていくため、オリジナルの着物の開発が始まります。
仕立てのお願いをしたのは、京手描友禅着物の製造会社『富宏染工』の代表で、皇室に和服を献上するほどの技量を持つ着物作家・藤井寛氏です。藤井氏は、衣裳の考案〜染めの仕上げまで15前後に分かれた京手描友禅の工程を、外注することなく自社の工房ですべておこなっています。

図案からオリジナルで作成をお願いしたため、企画発案から打合せ~下絵~色染め~金彩加工~仕立てと、約9ヶ月を経て完成に至りました。
<図案・下絵>

富宏染工を象徴する「雲取り」の柄を主に、羽ばたく姿が美しい鶴を配置したデザインです。
そんな職人の技術と熱意が込められ、完成した色打掛「雲取りに鶴」がこちら。
白地に、昔ながらの朱赤・赤・抹茶色などが鮮やかに染め上がり、羽ばたく鶴の姿が圧巻の美しさを放ちます。
花嫁様の気品、凛とした強さ、優しさ――そのすべてを引き出してくれる、優美で気高い打掛です。

2年以上の手仕事で完成した総絞り -藤娘きぬたやとの出会い-
最後に、萬屋本店でも人気の衣装を手掛けた「藤娘きぬたや」との開発ストーリーをご紹介します。
きぬたやさんは、創業時代から「誰も創ることが出来ない絞り・誰も創ろうとしない絞り」という信念のもと、74年にわたってお着物を仕立てている老舗です。非常に格式高いお着物で、天皇皇后両陛下が主催される園遊会で多くの著名人が着用になられたり、NYのメトロポリタン美術館に作品が永久所蔵されているほど。
もともと訪問着や振袖を専門としていたきぬたやさんでは、婚礼衣装のお取り扱いがありませんでした。
ですが、「トレンドに左右される衣装ではなく、日本人が大切に受け継いできたものや時代が変わっても色褪せない価値のある衣装をお届けしたい」という想いを持っていた萬屋本店との出会いをきっかけに、婚礼衣装を特別に手掛けてくださることになったのです。
そんなきぬたやさんに仕立てていただいたのは、「絞り染め」の引き振袖。
「絞り」は、職人が生地を小さくつまんでは括り、つまんでは括りを繰り返し、丹念に一粒一粒を絞っていくことでつくられる、手間と時間のかかる伝統技法。まさに人の手仕事の結晶です。
生地の全てが絞られた「総絞り」のお着物は、なんと一つの振袖で約20万粒以上。職人たちの希少な技術と想像を超える熱量が宿り、それが唯一無二の美しさとなって、花嫁様の魅力を最大限に引き出してくれるお着物です。
現在、きぬたやさんは婚礼衣装の仕立てを行っておらず、現存する衣装が最後となります。そのため、萬屋本店としてもその希少性と価値をより一層大切にしていきたいと思っています。
【2年以上もの時間をかけてつくっていただいた総絞り】

【鎌倉をイメージした「菊の文様に紫陽花」】

萬屋本店が「本物」の衣装にこだわるのは、ただ美しいものをお届けするためだけではありません。
「本物」の価値を伝え後世へと残していく。職人たちの技術と情熱を花嫁様に届け、次世代へと受け継いでいくこと。そんな想いがあるからです。
提携先の衣装店・オーセンティックさんから、このような言葉をいただいたことがあります。
「職人さんが手間暇をかけてどんなに良いものを創っても、それを伝えていく人がいなければ伝統を残すことは難しい世の中。だからこそ、萬屋本店が新郎新婦様に本物の着物の価値を伝えてくれることは、文化継承する上で、大変大きな役割を担ってくれていると思っています。」
結婚式は、一生のための一日。そんな特別な日を「美しい記憶」としてずっと残していくために、他にはない特別な一着をお選びいただけたら嬉しいです。
<卒花の小話>
私は萬屋本店で結婚式を挙げることになるまでは、着物に特別な憧れがあったわけではありませんでした。ですが、衣装の試着で本物の着物を目の前にしたときに、素人ながらも、これまで見てきた着物とはまったく違う美しさを感じ、その存在感にとても胸が高まりました。実際に着てみると、想像以上の上質さと重厚感に身が引き締まり、関心の薄かった着物に魅了されていったのを覚えています。
今回、改めて萬屋本店としての花嫁衣装への熱意や想い、お着物のストーリーを知って、結婚式というまたとない機会に日本人として和装を着られたこと、質が高く存在価値の高い着物を着られたことはとても貴重で幸せなことだったのだと感じました。
結婚式という日は、自分が思っていたよりも、その先の人生において深く心に刻まれます。それだけ大切な日だからこそ、本物の一着を纏うという経験を、ぜひ一人でも多くの花嫁様にしていただけたらと願っています。






